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kiwahaは2019年12月18日~22日に横浜赤レンガ倉庫で行われたアートコンペティション、4th Chiristmas Art Competition in YOKOHAMA 2019に出展しました。作品は温度によって色の変わる茶器で、会場ではサーモプレートをアプリで制御しリアルタイムでの色の変化を見せる予定でした。残念ながらアプリがうまく動作せず、会場での色変化は実現できませんでしたが、実際の変化の様子を収めた動画も流し来場者の方に見ていただきました。

なぜ色の変わる茶器を?

温度で色が変化するマグカップなどはすでに世の中に存在しますし、技術もとくに新しいものではありません。しかしそれを、煎茶碗に使うことにであらたに作品としての現代的な意味を生み出すことができるのではないかと考えました。

煎茶碗とは広義には煎茶を飲むうつわで湯呑とほぼ同義ですが、狭義には伝統ある煎茶道(煎茶を用いた茶道のこと)で使われる茶碗を指します。煎茶道は抹茶を使う茶道ほどの認知度はないものの、江戸時代に始まり今も多くの流派があり脈々と息づく伝統あるお茶の芸術、文化です。煎茶道で使われる煎茶碗は小さく、容量にして50ml前後のものが使われ、玉露などを呈するために使われます。

あえてこの煎茶碗を選択したことには2つの理由があります。ひとつは古くからある煎茶道の存在を認知してもらいたかったこと。そしてもう一つは、うつわにかける釉薬の考察と実験です。釉薬には機能的には表面の保護、情緒的には色彩や絵付け、景色と呼ばれる焼成条件によるテクスチャーの偶然の変化等による加飾という役割があります。うつわの世界ではとくにこの加飾に長い年月をかけ創意工夫をこらし、膨大な技術と美的価値を蓄積してきました。そして茶道はそこに深遠な意味をあたえることにより、うつわを芸術にまで昇華させました。この技術を芸術に昇華させるための「意味」の部分、ここにアートが成立する余地があると考えました。

加飾とは装飾を加えてなんらかの価値を生じさせる行為です。手工業の時代は高度な手の技術が価値を生み出し、大量生産の時代に入ると次々と新しい物を作り価値を生み出しては消費するようになり、モノがあふれる現代では物理的なモノの価値は下がり、情報やブランド、魅力的なSNS上の画像や動画など形がないものの価値が上がる一方で、消費のサイクルはますます早くなっています。そんな時代を反映したうつわの加飾とはなにかを考えた結果、いわゆる「映える」装飾を施そうと考え、このような器を作りました。

そして実際色が変化する様子の動画を作りツイッターに投稿したところ、当時フォロワー数100程度のアカウントで8万回以上の再生と3000以上のいいねを獲得しました。この時点で「映える」という目論見は小さな成功を収めたと言えますが、この作品の目的はそこではなく、はじめに述べたように装飾としての釉薬の実験と、煎茶道をはじめ忘れられつつあるお茶の文化や、お茶の世界の豊かさに興味を持ってもらうことにあります。

とはいえ、このようなカラフルなうつわは伝統ある煎茶道にはふさわしくないのではないか・・・実は京焼などの茶器には碗ごとにそれぞれ色の違うカラフルな煎茶碗も存在し、この作品のインスピレーションとなっています。また、煎茶道ではお茶を呈する時に一列に茶碗を並べますが、その時に次々と色の変わっていく様子はパフォーマンスの一つになるとも考えました。実際目にしてもらえば、不思議で楽しく美しいうつわだと感じてもらえるはずです。見る人の心を動かすことは装飾の本質であり、お茶ではなく「体験」を提供する茶道の本質のひとつでもあると考えました。